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多和田葉子「百年の散歩」 - yone

2017/05/25 (Thu) 21:23:19

 多和田葉子の近刊「百年の散歩」を堪能した。最近の文学を読んでもほぼ失望続き(そんなに読んでるのかよ!)なので、久しぶりに読む楽しさを味わえた。「あの人」(男か女か?)との待ち合わせのあいだのベルリン散歩。「あの人」とは誰か。あそらく数十年前に出会いそびれた人。「実際に起こらなかったことも歴史の一部である」という言葉を想起させるあり得たかもしれぬ彼氏(彼女)との待ち合わせまでの時間をベルリンの10の通りを散歩する。歩きながら「都市の無意識」が呼び覚まされ、思いは横への地理的移動かつ、100年の垂直の移動に駆り立てる。決してペダンチックな歴史談義に陥ることなく、連想は言葉の上を滑走する。その滑走こそがこの作品の「散歩」になっている。文中にある「言葉は本当は世界とは何の関係もないんだ」という認識の下、それでも文学を成り立たせようと苦戦している姿がひしひしと感じられた。その言葉の滑走は必ずしも成功しているとは言いがたいが(「あこがれの、焦がれの、焦げついた、じりじり燃える、燃えつきた、・・・」)言葉に文学的リアリティをいかに持たせるか、文学を成り立たせる言葉を如何に作っていくのか、現代の作家に突きつけられている問題に真っ正面からぶつかっている。もう一度きちんと読み、しっかり論じたい作品である。現代日本文学のエポックになる作品だと推薦します。

草間彌生展「わが永遠の魂」 - yone

2017/05/12 (Fri) 00:13:18

草間彌生展「わが永遠の魂」を見に国立新美術館に行ってきた。去年ここで見た「村上隆の五百羅漢図展」にえらく感動し、それなりに期待して、混んでいることを承知で出かけたのだが、並んでいたのはグッズのレジだけ。平日の昼間だったので鑑賞の妨げになるような混み方ではなかった。テレビ等で草間彌生の神話化をせっせとしているが、実際作品に対峙してみると、草間彌生はやはり20世紀のアーチストだとしみじみ感じた。では「20世紀のアーチスト」とは何かというと、それ以前の表現活動の影響の下でしか作品を生み出すことができないポストモダンな表現のことである。多くの作品はどう見てもホアン・ミロの影響下にあることを否定できないと思う。その他60年代のコラージュ作品やアングラ映画、マーク・ロスコを思わせる絵画作品等多くはいつかどこかで見た作品だ。まさしくポストモダンアーチスト。草間彌生も時代の子なのだとつくづく感じた展覧会でした。

米原万里に夢中 - yone

2017/05/08 (Mon) 22:10:05

 ここのところ米原万里にはまっていて毎日読みふけっている。生涯に18冊しか書けなかったことが残念でならない。ここ一週間で半分くらい読んでしまった。これまでのお勧めは「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」。ここでは「他諺の空似」からアンヌ・モレリの「戦争プロパガンダ10の法則」の孫引き。政府が国民を戦争に動員していくための嘘のつきかたの10パターン。
1,戦争を始める為政者は、必ず「われわれは戦争をしたくはない」と主張する。
2,争いを憎み平和のために最大限努力したのに、「敵側が一方的に戦争を望んでいる」と主張。
3,「敵の為政者は悪魔のような人間だ」と主張。
4,「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」のだ、と自分たちの戦争の神聖さを強調。
5,厭戦気分の広がりを阻止するため、「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵ははわざと残虐行為におよんでいる」と自己弁護と同時に敵の邪悪さを強調。
6,「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」と、あたかも自分たちは正々堂々と卑劣ではない兵器を用いているかのような口ぶりをする。
7,にもかかわらず「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」と数字の操作をし
8,「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」と御用文化人や御用作家を動員する。
9,これもこれも「われわれの大義は神聖なもの」だからこそであることをことあるごとに喧伝し。
10,従って、国民たる者、この戦争に協力するのは当然で、「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」、非国民である、ということになる。
 最近の北朝鮮をめぐる政府の姿勢やマスコミの報道ぶりはまさにこれではないか。
 米原万里を読んでいてつくづく思うのは文章とは”知性と芸”。そのどちらがかけても読むに値しないのではなかろうか。

Re: 米原万里に夢中 - yone

2017/05/11 (Thu) 00:30:12

ちなみに”知性と芸”どちらもあり、ほとんどのエッセイを読んでいる女性ライターはまず第一になんといっても須賀敦子、それから小倉千加子、金井恵美子、上野千鶴子、幸田文、向田邦子。読者に対しての身の預け方(信頼)を何よりも大切に考え書いている人たちです。

最後のケン・ローチ - yone

2017/04/24 (Mon) 22:49:56

 私はダニエル・ブレイク。大工。精神を病んだ妻の介護むなしく亡くし今は一人暮らし。自分も心臓疾患を患い医者から仕事を止められてしまう。国の支援手当を受けようと役所に行くが、そこは摩訶不思議な世界。パソコンもできないダニエルにとって、ただ単に自分の尊厳を傷つけられるだけ。アパートの隣に住むゲイのカップルも役所で知り合った二人の子供を抱えたシンブルマザーもとことん貧しい。サッチャーや中曽根が始めたグローバリズムはただ単に格差を広げただけ。自己責任?生活保護のカット?いずこも同じ分断社会。救いは貧しいもの同士の助け合い。
 前作「ジミー、野を駆ける伝説」で引退宣言をしたケン・ローチがどうしても撮りたく作った「わたしは、ダニエル・ブレイク」。長年のケン・ローチファンとしてはとてもうれしく早速劇場に駆けつけたが、先日は満員で入場できず、今日やっと見ることが出来た(ヒューマントラストシネマ有楽町)。
ラスト、ダニエルが心臓発作でなくなり、シングルマザーのケイティが弔辞を読む場面で涙が止まらなかった。昔は日本でも社会派映画があったが今はほぼ皆無。世界でもケン・ローチみたいに一貫して社会問題を取り上げてきた作家はまさに希少価値。この映画のポスターを見ただけでもうるうるしてしてしまう。去年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール作品。

キトラ・ボックス - yone

2017/04/18 (Tue) 07:49:37

池澤夏樹の新刊「キトラ・ボックス」を一気に読んだ。2014年に行った国立博物館「キトラ古墳壁画展」の関心から読んだのだが、梅原猛「黄泉の王 ~私見・高松塚~」ほどの深い仮説もなかったが、まあ小説なので楽しく読めたので及第点。里中満智子のコミック「天上の虹」もそうだが、この時代の古代史はとても面白い。「キトラ・ボックス」にも書かれていたが、中国の異民族との侵攻の歴史ほどのスケールはないが、内輪での陰謀の顛末。日本史って大体これですよね。池澤夏樹っていえば、私にとってはなんといってもアンゲロプロスの翻訳者。21世紀の最高傑作「エレニの旅」を越える作品はまだ現れていません。つくづくアンゲロプロスの交通事故死が惜しまれてなりません。エレニ三部作の完結をどんなに待ち望んでいたことか。もう一つ池澤夏樹個人編集「日本文学全集」を楽しんで読んでいると以前書いたが、お勧めは第10巻。近松の「曾根崎心中」「女殺油地獄」それから文楽の三大傑作「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」が一冊に入っていて、わくわくして読みました。

高橋源一郎‏訳 教育勅語 - yone

2017/03/15 (Wed) 22:53:37

①「はい、天皇です。よろしく。ぼくがふだん考えていることをいまから言うのでしっかり聞いてください。もともとこの国は、ぼくたち天皇家の祖先が作ったものなんです。知ってました? とにかく、ぼくたちの祖先は代々、みんな実に立派で素晴らしい徳の持ち主ばかりでしたね」
②「きみたち国民は、いま、そのパーフェクトに素晴らしいぼくたち天皇家の臣下であるわけです。そこのところを忘れてはいけませんよ。その上で言いますけど、きみたち国民は、長い間、臣下としては主君に忠誠を尽くし、子どもとしては親に孝行をしてきたわけです」
③「その点に関しては、一人の例外もなくね。その歴史こそ、この国の根本であり、素晴らしいところなんですよ。そういうわけですから、教育の原理もそこに置かなきゃなりません。きみたち天皇家の臣下である国民は、それを前提にした上で、父母を敬い、兄弟は仲良くし、夫婦は喧嘩しないこと」
④「そして、友だちは信じ合い、何をするにも慎み深く、博愛精神を持ち、勉強し、仕事のやり方を習い、そのことによって智能をさらに上の段階に押し上げ、徳と才能をさらに立派なものにし、なにより、公共の利益と社会の為になることを第一に考えるような人間にならなくちゃなりません」
⑤「もちろんのことだけれど、ぼくが制定した憲法を大切にして、法律をやぶるようなことは絶対しちゃいけません。よろしいですか。さて、その上で、いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください」
⑥「というか、永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。それが正義であり「人としての正しい道」なんです。そのことは、きみたちが、ただ単にぼくの忠実な臣下であることを証明するだけでなく、きみたちの祖先が同じように忠誠を誓っていたことを讃えることにもなるんです
⑦「いままで述べたことはどれも、ぼくたち天皇家の偉大な祖先が残してくれた素晴らしい教訓であり、その子孫であるぼくも臣下であるきみたち国民も、共に守っていかなければならないことであり、あらゆる時代を通じ、世界中どこに行っても通用する、絶対に間違いの無い「真理」なんです」
⑧「そういうわけで、ぼくも、きみたち天皇家の臣下である国民も、そのことを決して忘れず、みんな心を一つにして、そのことを実践していこうじゃありませんか。以上! 明治二十三年十月三十日 天皇」

Re: 高橋源一郎‏訳 教育勅語 - yone

2017/03/18 (Sat) 21:26:09

https://youtu.be/uB4RDvB7T78

民進党横路孝弘氏の質問。必見!稲田のバカとの違い一目瞭然。これだけの見識の議員まだいたんだ。

Re: 高橋源一郎‏訳 教育勅語 - yone

2017/03/19 (Sun) 22:42:05

話題になっている、米ホロコースト記念博物館にある「ファシズムの初期段階における危険な兆候」

・強情なナショナリズム
・人権の軽視
・団結のための敵国づくり
・軍事の優先
・性差別の横行
・マスメディアのコントロール
・国家の治安に対する執着
・宗教と政治の癒着
・企業の保護
・労働者の抑圧
・学問と芸術の軽視
・犯罪の厳罰化への執着
・身びいきの横行と腐敗
・不正な選挙

牯嶺街少年殺人事件 - yone

2017/03/13 (Mon) 19:57:07

エドワード・ヤンの「牯嶺街少年殺人事件」を見に行った。最初に公開された時にも行ったのだが、大部分寝てしまったので、いつかまた見たいと思っていたのだが、それから四半世紀、やっと通して見ることがなかった。上映時間4時間弱。一昨年見た「ハッピー・アワー」の5時間超は圧倒されっぱなしで時間を感じさせなかったが、去年公開された「チリの闘い」は4時間半にためらっていたらいつの間にか終わってしまい後悔している次第。さて「牯嶺街少年殺人事件」だが、エドワード・ヤンの遺作「ヤンヤン 夏の想い出」が大傑作であっただけに、どうもそれと比べてしまうのだが、主人公「小四」の息遣いがビビットに迫ってくる。そして何よりも画面の強度、つまり役者や物をこう配置し、カメラはこの距離からこういうアングルでこのくらいの時間写さなければ、が全くもって完璧で、圧倒されっぱなしであった。すごい!先日見た西川美和の「長い言い訳」の弛緩しきった画面を見てうんざりしたのと比べて・・・比べてはいけないよな。ちなみに西川美和作品はすべて見ています。「蛇イチゴ」「ゆれる」「ディア・ドクター」「夢売るふたり」西川美和は脚本家・作家としてはとても有能です。近いうちに必ず芥川賞くらい取ると思います。しかし映画監督としては×です。先日「雨月物語」を読んだついでに溝口健二「雨月物語」を再見したのですが、やはり大傑作。映画はこういう風に作らなければならないと、つまり画面の緊張感。脚本も原作を読んだばかりだったので、構成の見事さに感心しきり。

隅田川沿いの桜 - yone

2017/03/03 (Fri) 09:24:50

 だいぶ春めいてきましたね。先日「府中市郷土の森梅祭り」に行ってきました。熱海なんかよりよっぽど充実しておりびっくりしました。梅見にはお勧めです。地元の人で大賑わいでした。隅田川沿いの陽光桜も五分咲き。来週末位まで楽しめそうです。橋は水神大橋です。お出かけ下さい。

騎士団長殺し - yone

2017/02/28 (Tue) 03:11:08

村上春樹「騎士団長殺し」を読み終わった。これが最後の村上春樹の長編のような気がしてならない。早稲田の生協で「風の歌を聴け」を購入し、「群像」で「羊をめぐる冒険」を読んで衝撃を受け、だいたい同時代的につかず離れず彼の作品を読んできた。ところが今回の作品は始めから終わりまですべて過去の作品の寄せ集め。最近では影を潜めていた気の利いた比喩の復活、「ねじまき鳥クロニクル」の笠原メイのような少女、突然の妻からの離縁、人妻とのSex,壁の中でのSeek & Find。その他その他、みんな過去の作品の中にあるものばかり。唯一違うのは、最後に妻とよりを戻し、子供を育てるところで終わるところか。私は村上作品は絶対的な悪の探求がテーマだと思っているが(今回もナチスドイツや南京大虐殺が出てくる)、最近の世の中にはアベやトランプのような”悪”が平然と表に出てきたので、村上作品の”悪”のありようもだいぶ薄められてしまった。そんなこんなでこれが彼の最後の長編になるような気がしております。

ラ・ラ・ランド - yone

2017/02/21 (Tue) 21:40:23

公開前に話題の「ラ・ラ・ランド」を見た。ミュージカル大好きなのでとても期待していたのだが結果はちょっと残念。なぜあまり乗れなかったのか。主人公達が「理由なき反抗」を見にいくのだが、そこにすべての原因が示されている。つまり「理由なり反抗」のニコラス・レイにあってこの映画にない、映画の経済学、つまり無駄なショットやシーンが多く、映画の構成もあまりよくない。はっきりいって時間が長すぎる。昔のハリウッドの作品は大物プロデューサーが絶対の権力を持っていて、やたらフイルムを切ったり編集しまくったりしていたそうだが、つらつら考えてみるにそれも罪もあるけれども功もあったのではないかとそんな気が最近しています。この監督デイミアン・チャゼルの前作「セッション」はあんなにしまっていたのに大作になるとやはりいろいろ制約があるのかななんて思ってしまいます。主演のエマ・ストーンは最近のお気に入り。それよりも男性のライアン・ゴズリングがよかった。何と!今週の「AERA」の表紙ではないか。
 下の分からず行けなかった徳田秋声ゆかりの地のリベンジではないが、「あらくれ」を読んだ。それよりもその原作の映画版、成瀬巳喜男作品の方がよかった。成瀬作品としては必ずしも上出来ではないが、主人公お島を演じた高峰秀子。彼女しか考えられない配役であったと思う。
 


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